人工知能

先日、東大の中川教授の最終講義に行って来ました。

 

汎用目的AIと汎用AIの二つを明確に定義しており、その違いについて時間を割いて説明していました。

 

汎用目的AI: 条件に応じて目的特化型のAIを選択するAI。入り口の役割を果たし、目的を分

        類するAIであり、実際の作業は目的特化型AIが行う。例えば、囲碁をしたいなら

        アルファ碁を動かし、画像識別を行いたいなら画像識別用のAIを動作させる。

        つまり、マネジメント機能と特化型への橋渡しの役割を持つ。

汎用AI: 用途に応じたAIを自ら作り出す。マネジメント機能と開発機能の両方を持つAI。

 

確かに、この二つは全く異なったモノであり、最近流行の”人工知能が全人類を超える”を実現する可能性が汎用AIでは存在します。

しかし、目的特化型のAIも個々の性能が向上しており、特定分野では人間を凌駕しているモノが少なくありません。つまり、人間を凌駕している目的特化型AIのみで構成されたシステムにおいては、傍目には人間を凌駕した人工知能にも見えます。

ですので、人工知能について考える場合は、この二つの違いを理解した上で考えないと本質を見誤ります。また、「AI」という言葉がバズワード化しており、ツールを用いて統計処理を行っただけの物を「AIを用いて分析」などと表現している場合も珍しくありません。

 

人間はモノを認識する際、視覚情報というレイヤーだけでは認識できず聴覚など他のレイヤーの組み合わせを必要とする場合が少なくありません。つまり、複数のレイヤーを俯瞰する事で初めて認識できる存在がある。であるなら、汎用AIが誕生しても、汎用AIが人間より多くのレイヤーを俯瞰できる存在であった場合、人間は汎用AIを認識する事が出来ない可能性もあります。それを考えると、シュミレーション仮説もより一層現実味を増します。

 

また、AIはほぼ確実に人間の仕事を奪う結果となるでしょう。

これは、今に始まったことではなく産業革命以降に継続的に生じてきた現象です。例えば、30年前は商業高校で簿記を身に付けた人に対して旺盛な需要がありましたが、会計ソフトの出現による自動化で商業高校生への需要は大きく現象しました。

また、かつての旅客機は、操縦士・副操縦士航空機関士の3名がコクピットに配置されていましたが、現在、日本国内の旅客機で航空機関士が乗務している飛行機はありません。

つまり、航空機関士という知的労働職が技術の進歩によってなくなりました。

 

技術の進歩は、労働集約型産業・知的集約型産業そのどちらの仕事も奪ってきました。

汎用AIが登場せずとも様々な産業で汎用目的AIの利用が進むことにより、多くの産業で技術革新の速度が向上し、自動化は加速度的に進展します。。

 

これに対する対応策の一つとして、自動化への障壁となる規制を行い自動化の進展を遅らせるという手段が考えられます。しかし、それでは自動化を促進させた国の企業と比較し国際競争力が低下します。例えば、現金決済しか認めていない国があったとすると、キャッシュレス化に必要な技術やキャッシュレス社会におけるサービスなどが発展しないため、キャッシュレス産業において当該国は国際競争力を失います。

 

では、自動化を推進する施策の場合、国際競争力は安泰なのでしょうか? 自動化を促進した場合、より有利な税制でエネルギー価格の低い環境で生産活動を行える国へ企業は拠点を移す事が考えられます。

であるなら、税金が安く電力価格の安い地域への産業集積が進み、製造業の中国への集約と同様のことがあらゆる産業で起こるのでしょうか?